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萩尾望都トークショーレポート [マンガ]

8月4日に高崎の萩尾望都SF原画展の記念イベント「萩尾望都トークショー」 に当たったので行ってきました。
萩尾さんのお話を聞けて大変貴重な体験でした。
一応結構長いレポート書いたのですが、興味のない人には無縁な情報なので以下は興味のある人だけどうぞ。


萩尾望都トークショーレポート1

司会は飯田耕一郎さん、ゲストは浦沢直樹さん。
最初は飯田さんのあいさつと、応募は定員の3倍で当選確率は1/3だった。皆さんは幸運ですとの事。
飯田さんの自己紹介の途中で萩尾さん、浦沢さん登場。

お二人の挨拶の後、最初はプレゼント交換。
後ろの席からは良く見えませんでしたが、萩尾さんから浦沢さんへは宝塚の「ポーの一族」のDVD。
浦沢さんから萩尾さんへは自分のCD?ピアノは難波弘之さんという所に個人的には反応してしまいました。
山下達郎さんのコンサートで難波さんの演奏を聞いたばかりなので。

次は萩尾望都SF原画展の話から。
浦沢「皆さん、萩尾望都SF原画展ご覧になりましたか?」
会場のほとんどの人が手を上げる。
浦沢「原画見ましたが萩尾先生、印刷の事何も考えてないでしょう?あの線、色は印刷に出ないです」
萩尾「それはあまり気にしていません」
浦沢「そうなんですか、私は印刷に出る程度の線、色で描いていますがそれでも文句を言って嫌われています」
萩尾「あきらめの境地ですね」
浦沢「マンガの電子書籍化も進んでいますが、萩尾先生は電子、紙どちらでしょうか」
萩尾「それは紙で見てほしいです。書籍を見開いた時のコマの流れを計算して描いているので」

萩尾望都トークショーレポート2

浦沢「萩尾先生の絵の特徴としては目。特に目の下に描きこむのが印象的です。萩尾節ではないでしょうか。実は最近影響されて私も目の下に描いています。」
萩尾「そうですか。実は最近筆を持つ力が衰えて思うような線が引けません。それが最近の悩みです。」
司会「浦沢先生が萩尾先生と初めて会ったのは?」
浦沢「デビューして1年目くらいの小学館のパーティーです。目の前を手塚治虫先生が通ったのですが、当時私の担当編集者の長崎尚志はその前は手塚担当で、そのせいか長崎さんを見た手塚先生は締め切りの催促をされるかと逃げた。それが手塚先生との最初で最後の出会いでした。
疲れて椅子に座っていたら萩尾先生が黒い服を着て颯爽と歩いていった。そのあとをファンがモー様!と言いながら追いかけていった、という出会いです。すごい世界だと思いました」
浦沢「漫勉という番組で萩尾先生の仕事場を撮影しましたが、もっと華麗な仕事場かと思ったら?」
萩尾「すごく片付けてあれです。全然片付いていません。」
浦沢「萩尾先生は少女マンガの時代の絵から少年マンガを描くときはかなり絵を変えましたね。」
萩尾「百億の昼と千億の夜は編集の要求で連載前に400枚先に書きだめました。阿修羅王は昔から好きで昔は興福寺の阿修羅像ももっとじっくり見られました。」
浦沢「話は変わりますが、締め切りが終わって時間が空くと仕事に関係ない絵描いてません?」

萩尾望都トークショーレポート3


浦沢「ネームで考えた展開がいざペン入れすると間違いに気づくってありませんか」
萩尾「ありますね」
浦沢「そればっかりです。ところでブラッドべりはお好きですね」
萩尾「好きです」
浦沢「ブラッドベリの描く少年はまさに萩尾さんの世界ですね」
萩尾「描いていて楽しかったです」
浦沢「ブラッドベリの影響は大きいですね。例えばキング。最近も映画化された「IT」のピエロはそのまま」
萩尾「そういわれればキングはブラッドベリですね」
浦沢「マンガ家って小説読むのに時間がかかります。ついキャラデザや背景を頭の中で描いてしまう」
司会「ところでお二人の好きなお互いのマンガは何でしょう」
萩尾「モンスターです。ヨハンが好き」
浦沢「ヨハンお好きそうですね。私はスターレッドです。あの赤は強烈」

萩尾望都トークショーレポート4

浦沢「萩尾先生がマンガ家になろうと思ったのは手塚先生の「新選組」を読んだからという事ですが」
萩尾「手塚先生の「新選組」を読んだらそのイメージでいっぱいになって、この感動を伝えたいとマンガ家になる決心しました」
この話はとても有名ですが、萩尾さんご本人の口から聞くとインパクトありました。
司会「ここでお二人の作品の画面構成を見てみましょう」
これまでもお二人の作品がスクリーンに投影されていました。
今回は司会の選んだお二人の作品のコマがスクリーンに映しだされ、コマの流れを説明。視線誘導や見開きの構成について。
萩尾作品は初期の「ママレードちゃん」。俯瞰で上から下に転がるオレンジへの視線誘導など。
浦沢作品は「PLUTO」。キャラクターの視線の方向など。
浦沢「こういう効果って考えて描いていないです。ネームの流れで自然にそうなる」
萩尾「画面の流れは音楽的な感覚ですね」
浦沢「萩尾先生の特徴は横長のコマが多いこと」
萩尾「距離感、キャラの立ち位置が合いやすい気がします」
浦沢「萩尾さんの幻想的な場面展開。これはまねできない」
例えばと「銀の三角」の1シーンなどを例にあげていました。

萩尾望都トークショーレポート5

司会「少年誌の週刊連載というのは大変ですよね。」
浦沢「ぼくは少年誌の連載はしたことないのですが、一番描いていた時はほとんど寝ていない。どうやっていたのか覚えてないです」
萩尾「月刊誌が中心なので週刊連載している先生に比べると大変ではないです」
浦沢「でも手塚先生の1977年11月のスケジュールを見ると、週刊連載5本、月刊連載5本とかとんでもないです。アイディアは売るほどあるとか言っていましたし」
萩尾「昔、手塚先生に、お話を考えるのが大変でと言ったら、不思議そうに「どうして?」と言われました」
浦沢「でも手塚先生は自分には何もないとも言っていたんですよね。そういえば私も自分の中には何もない。机に座って考えると出てくる」
司会「浦沢先生は原作つきの作品もありましたが」
浦沢「「パイナップルARMY」と「MASTERキートン」は原作付きでしたが、結構好き勝手に書いてました。ただ、毎週きっちりまとめて落ちをつけるのがいやになってそれで「MONSTER」を始めたというのもあります。」
浦沢「「YAWARA!」」は自分で売り込んだんですが、可愛い女の子をほとんど書いた事がなかったので、あわてて吉田まゆみさんの作品を買ってきて参考にしました」
司会「読者の意見は参考にしますか?」
萩尾「ファンレターくらいですね」
浦沢「SNSは見ない。読者の感想は聞かない。ファンレターは編集者が否定的なものはフィルターしてくれるからいいですが」

萩尾望都トークショーレポート6(終)

司会「萩尾先生も出演された「漫勉」という番組の話を少し」
浦沢「あの番組が始まると都内から4Kカメラ(のレンタル)が消えるとか。カメラマンが仕事場に入るのはダメなので、自分がモルモットになってカメラをどうセットしたらいいかを試した。」
浦沢「NHKのプロデューサーにはマンガ家はデリケートなのでミーアキャットを撮影する様に撮ってほしいといいました」
司会「手塚先生以外の石ノ森先生やちば先生の影響はどうですか」
萩尾「やはりサイボーグ009の影響は大きいです」
浦沢「島村ジョーですね。佐野元春が石ノ森先生に島村ジョーのイラストとサインをもらったと自慢していましたが、モノクロだったので自分で色を塗って台無しになったとか。気の毒なので島村ジョー描いて送ってあげました」
司会「新作の「夢印」はルーブル美術館とのコラボですね」
浦和「マンガ家とルーブルのコラボ展「ルーヴルNo.9」(※私も博多で見ました)に間に合わなかったので、どうしようと考えていたらあのキャラ(イヤミ)を出したらどうかなと思いつきすぐにできました。」
司会「そろそろ最後ですが、、」
浦沢「埼玉県立近代美術館で浦沢直樹展を9月2日までやっていますのでぜひご覧ください。もちろん萩尾望都SF原画展も。ところで萩尾先生のSFに限定しない原画展もやってほしいですね。そうですよね皆さん」
(会場拍手)
萩尾「SF原画展は絵がどう変わってきているかを見てほしいです。ありがとうございました」
(会場拍手)

浦沢直樹の漫勉
http://www.nhk.or.jp/manben/

浦沢直樹展 描いて描いて描きまくる! -埼玉の巻-
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?page_id=383

ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」
https://jp.ambafrance.org/article10318

司会の飯田耕一郎さん のtwitterに萩尾さん、浦沢さんとの写真が。
https://twitter.com/009usaya/status/1025657834934030336

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coco030705

萩尾望都さんの漫画、大好きでした。「ポーの一族」が特に。
ブラッドベリの作品もよく読んでました、好きな作家です。萩尾さんが好きだとは知りませんでした。手塚先生と石ノ森先生に影響を受けてたのですね。手塚治虫の漫画は何でも好きですし、石ノ森章太郎の「サイボーグ009」も面白かったです。
いいトークショーへ行ってこられましたね。
by coco030705 (2018-09-25 19:23) 

きさ

ココさん、コメント&nice!ありがとうございます。
中学生の時、友人の家で妹さんが買っていた別冊少女コミックの「ポーの村」を読んで萩尾望都ファンになりました。
その後は貸本屋でほとんどの月刊少女雑誌を読むほどに。
一昨年「ポーの一族」の40年ぶりの続編が描かれた事はご存知でしょうか?「春の夢」。
それは第二次大戦中のイギリスが舞台でしたが、今年掲載された「ユニコーン」の設定は2016年。1976年の「エディス」の後の話でした!

by きさ (2018-09-25 21:18) 

coco030705

きささんへ
先ほどはありがとうございました!Amazonで買いました。1~2日で届くと思います。(^-^)

by coco030705 (2018-09-26 22:21) 

Naka

こんばんは。
本当に貴重なトークショーですね。
当選おめでとうございます(^^
お話にある”浦沢直樹の漫勉”をTVで見た時、
萩尾先生の登場人物の表情への拘りが凄すぎて感動しました。
とても興味深いレポート、ありがとうございます。
by Naka (2018-09-27 01:53) 

きさ

ココさん、いえいえ、おせっかいすみません。

by きさ (2018-09-27 02:50) 

きさ

Nakaさん、コメントありがとうございます。
結構、倍率高いだろうなあと思っていたので当たったのはびっくり。
大変楽しかったです。
by きさ (2018-09-27 02:51) 

べる

詳細なトークショウ・レポ、ありがとうございました!
「萩尾先生のSFに限定しない原画展」是非実現して欲しいですね。
浦沢先生、グッジョブ!
by べる (2018-09-27 21:26) 

きさ

べるさん、コメントありがとうございます。
まあせっかくレポート書いたのでできるだけ色々な人に読んでいただこうかと。
by きさ (2018-09-27 22:10) 

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