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萩尾望都「一度きりの大泉の話」 [本]

萩尾望都「一度きりの大泉の話」河出書房新社 読みました。

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352ページ、12万字書き下ろし。未発表スケッチ多数収録。
出会いと別れの“大泉時代"を、現在の心境もこめて綴った70年代回想録。
「ちょっと暗めの部分もあるお話 ―― 日記というか記録です。
人生にはいろんな出会いがあります。
これは私の出会った方との交友が失われた人間関係失敗談です」
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萩尾望都さんが大泉で竹宮恵子さんと同居した顛末を書いた本です。
竹宮恵子さんの『少年の名はジルベール』は読んで感銘を受けました。
竹宮さんが萩尾さんへの嫉妬心を抑えきれず、距離を置きたいと言った顛末が真摯に書かれていたからです。
ですが、その距離を置かれた萩尾さんの方はどうだったのか。
この本はそれを書いた本です。
基本的には冷静に描かれた『少年の名はジルベール』と比べると血を吐くような本でした。
竹宮さんの本では描かれなかった萩尾さんにショックを与えたエピソードも描かれて、それは繊細な萩尾さんはさぞやショックだったるろうと思いました。
精神的なショックで一時期視力が低下し半分盲目状態になったのだとか。
萩尾さんは大泉サロンなど存在しなかったと書いていますが、この本の前半は大泉に色々なマンガ家やファンが集まってくるエピソードを描いていてわくわくします。
それが無残に終わる事を知っているのでハラハラしながら読みました。
萩尾さんは今でも当時を思い出すと体調が悪くなるそうです。
萩尾さんのファンはこの本を読んでもう萩尾さんをそっとしておいて欲しいと感想書いていました。
私も同感です。
ただ、竹宮さんも、萩尾さんも、同居するきっかけを作ったキーマンの増山法恵さんも当時20、22才。
私自身の若い頃の人間関係失敗経験も色々と想起されて痛々しいと思いました。
この本を読むならば『少年の名はジルベール』も併せて読むべきだと思います。
『少年の名はジルベール』を読んだ人も同様にこちらを読む事をお勧めします。
その上で萩尾さんをそっとしておいて欲しいと思います。


一度きりの大泉の話

一度きりの大泉の話

  • 作者: 萩尾望都
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/04/21
  • メディア: Kindle版



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coco030705

お二人ともいい漫画家なのに、残念なことになってしまったんですね。
アーティストを同居させるのは、やっぱり無理なことですね。
萩尾望都さん、今はお元気なんでしょうね。この本を書いて、過去を忘れたかったのではないでしょうか。
by coco030705 (2021-06-14 23:58) 

きさ

ココさん、いつもコメント&nice!ありがとうございます。
アーティストの同居というのは色々とありますね。
極端な例だとゴッホとゴーギャンとか。
萩尾さんの元には竹宮さんと対談して欲しいとか、ドラマ化したいとかといった依頼が来たそうです。
今は関係を断っていると言っても再三連絡があり、一度だけ語ってまた封印したいという事でこの本を書かれたそうです。
by きさ (2021-06-15 07:26) 

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